調整項目が多く、多少根気が必要ですが、一度調整が済めば再調整の必要はほぼないため、最初の努力が肝心です。
1.ベッド調整
ベッド(またはテーブル、プラットフォーム)の高さと傾きの調整は印刷の品質に強く影響するため、とても重要です。ホットエンドとベッドとが離れていると印刷物の一層目がベッドにくっつかず、逆に近すぎると一層目はつきますが、二層目以降がくっつかなくなります。
公式Wikiで紹介されている、「Leveling the bed with a piece of paper」を手本に行いました。
(※1 ベッドを水平にすればよいわけではありません。SolidoodleのX-Y軸と平行であることが必要です。)
(※2 調整は、Z軸が原点にある状態で行います。原点復帰のGコードは「G28」です。)
適当なカードをベッドとホットエンドとの間に挟んでクリアランスを確認 |
これは、適当な紙片やカードの厚みを基準にしてベッドとホットエンドとのスキマ(クリアランス)を一定に調整する方法です。Z軸の原点は後で調整するので、紙片の厚さはいくつでもかまいません。ベッドには高さ調整用のねじが3本ありますが、まず手前の2本で左右(X軸方向)の平行を出してから、奥の1本で前後(Y軸方向)の平行を出すと調整しやすいと思います。以上で、X-Y軸とベッドとが(だいたい)平行になりました。
続いて、Z軸の原点を調整します。これはZ軸原点のリミットスイッチを押すボルトを回して行います。この調整は、実際に印刷をしながら行うのが良いと思います。印刷物の一層目がベッドにくっつくギリギリの高さを探します。
(※3 ベッドのたわみや変形があり、ベッドとホットエンドとの距離を完全に均一にはできません。これには、フィラメントの送り量を増やしたり、X-Y軸の送り速度を遅くしたりして対処しています。)
2.X-Y軸調整
タイミングベルトのテンション調整や、タイミングプーリの位相調整を行います。手順はトラブルシューティングの動画「True Circle Realignment Instructions」が参考になります。
調整後に20mm角の立方体を0.3mmピッチで印刷すると、Y軸方向のみ0.5mm小さく印刷されてしまいました。印刷物を40mm角の立方体にしても0.5mm小さいままです。下記の対策を行いましたがどれも効果がなく、現在はしかたなくそのまま使っています。Gコード自体にも問題はなさそうなので、メカの剛性や精度不足による問題かもしれません。
<実施しても効果がなかったこと一覧>
・スライド軸のグリス交換
・タイミングベルトのテンションをきつめにする
・モータドライバの電流制限値を上げる(または下げる)
・印刷中にフィラメントを手動で送る(ヘッドにテンションがかからないようにする)
Y軸の誤差はこれ以上小さくできそうにないため、印刷物の精度が必要な方向をX軸かZ軸方向にもってくるなどの暫定対策でしのいでいます。
なお、0.1mmピッチで印刷すると誤差は0.2mmに低減されました。
3.X軸モータ発熱対策
印刷中、X軸のモータが手で触れないほど発熱していることに気づきました。X軸のモータはY軸、Z軸よりも容量が小さく、プリンタ本体(金属製)から離れているため放熱性も悪いようです。ステッピングモータはもともと発熱が多いようですが、あまりに高温になると脱調の危険もあるため対策しました。下記2つの対策の結果、触っていられる温度にまでなりました。
対策1:モータに流す電流を下げる
モータドライバ上のトリマを回すことで、モータに流す電流を調整できます。方法はトラブルシューティングの「Instructions for Adjusting the Stepper Motor Chips」に載っています。トリマの電圧が高いほど、大電流が流れます。X軸のデフォルトは0.443Vですが、0.3Vまで下げました。ここまで下げても印刷に影響はありませんでした。
トリマの中央にテスターを当てるとモータドライバの電流設定電圧がわかる |
対策2:ヒートシンクを付ける
安直ですが確実に効果があります。ジャンクの適当なヒートシンク3つを、パソコン用品店で売っていた熱伝導両面テープでモータに貼り付けました。なお、ヒートシンクが大きすぎるとベッドやフレームと干渉するので注意です。
ヒートシンクと熱伝導両面テープ |
ヒートシンクを付けたX軸モータ |
4.フィラメント押し出し量(Flow Rate)調整
ウィキ記載の調整方法で行いました。Slic3rの設定を変えて立方体の外側一層だけを印刷し、ノギスで厚みを測りながら値を調整していきます。プリンタの調整というよりは、Slic3rのパラメータ調整の作業になります。
(※4 プリンタ本体のEEPROMで設定する方法もあるようです)
以下、手順です。
①立方体の.stlファイルを用意します。私は一辺が20mmのものを使いました。
②Slic3rの設定を変更して、外側一層(シェル)だけのGコードを生成するようにします。
まずRepetier HostのSlic3rの設定画面(Configure)で調整する設定ファイルをロードします。今回はSolidoodle .3mmを調整します。
Print Settingsタブで、次のように数値を変えます。
=> Layers and perimeters => Horizontal shells => Solid layers: Top,Bottom を1に。
=> Layers and perimeters => Vertical shells => Perimeters を1に。
=> Infill => Infill => Fill density を0に。
=> Infill => Infill => Fill pattern をlineに。
フロッピーのボタンを押して、設定を適当な名前で保存します。
③Repetier HostのSlicerタブでPrint Settingsから保存した設定を選び、スライスして印刷を行います。適当な高さまで印刷できたら印刷を止めます。
シェル状に印刷されたブロック |
④ノギスでシェルの厚みを測ります。4面とも0.5mmでした。この厚みが、設定ファイルのExtrusion width ⇒ Default extrusion width(デフォルトは0.42mm)となるのが理想なので、少し押し出しすぎです。
⑤Slic3rの設定画面 => Filament Settings => Filament => Extrusion multiplierの値を小さくします。デフォルトは0.79でした。
⑥手順の③~⑤を繰り返して調整します。
左が調整前、右が調整後。 ちがいはわずかですが、印刷物の形状が複雑なほど見た目に影響します。 |
5.ヒータPIDパラメータ調整
Solidoodleにはベッドとヒートエンドの2つのヒータがあります。ベッドはON-OFF制御なので調整不要ですが、ヒートエンドはより精密な温度管理をするためにPID制御を用いています。このパラメータ調整は、自動調整(オートチューニング)機能を使うと楽にできます。
公式のトラブルシューティングにも調整方法の記載がありますが、下記ページのほうが分かりやすいと思います。
プリンタを起動し、Repetier HostからGコードを発行して自動調整を行います。書式は、『M303 S[設定温度] C[サイクル数]』です。サイクル数の意味がハッキリしなかったのですが、試行回数か応答の収束判定のことだと思われます。調整中はヒータが加熱されるため注意してください。自動調整の途中でエラーが出ることがありますが、非常停止すれば問題ないようです。現在は、『M303 S190 C5』で調整されたパラメータを使用しています。
6.冷却時間設定
印刷される面積が狭い(印刷に時間がかからない)場合、押し出したフィラメントが十分固まる前に次の層の印刷が始まってしまい、形の崩れやコゲが発生します。これを回避するためにフィラメント冷却用のファンを持つプリンタもありますが、Solidoodleにはないため印刷速度を落として対処します。
Slic3rの設定画面のFilament Settingsタブ => Cooling thresholds => Slow down if layer~ の値で設定できます。デフォルトは25秒で、一層の印刷に25秒以上かかる場合は印刷速度を落とします。現在は35秒にして使用しています。
以上で、Solidoodleの設定は終了です。
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追記:
”4.フィラメント押し出し量(Flow Rate)調整”の間違いを修正しました。シェルの厚さは、積層ピッチではなくDefault extrusion widthで指定した値になるように調整します。
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